忘れの里 雅叙苑 - コラム~総括(3)-

田島社長はその頃、新たな融資の願いを以前勤めていた金融機関に申し込んでいた。
当時の売り上げは月商30万円の年商360万円。
ところが融資希望額は1,650万円。通常なら、貸してくれるはずもない。
融資担当者にも毎日のように出向き、銀行の開いている朝9時から午後3時まで粘り強く交渉した。
まさに女将さんへのプロポーズの時のように本当に何度も足を運んだ。
「このままではうちの旅館はダメになってしまう。」ただ、その一念で行動していた。
しかし、担当者がノイローゼになりかけた頃、遂に支店長も音を上げた。
融資の申し込みが通ったのだ。
以前の安普請の宿は、水道、温泉の整備、通路の補修など手を加えなければならない場所がたくさんあったという。女将さんにも子供ができ、地に足をつけて頑張ろうと心に決めた。

しかし、その融資も特効薬にはならず、低迷状態から抜け出せずにいた。
創業時と同じ、客も工事現場の作業員がほとんどだった。
「なぜうちの旅館には客が来ないんだ?」従業員も雇えず、夫婦二人で連日朝早く夜遅くまで働きながら、いっこうに良い兆しは見えない。
そのどん底の時は何度も宿をたたもうかといつも夫婦で話していたという。
それでも田島社長は女将さんに励まされながら、次なる手を模索していた。
忘れの里 雅叙苑 - コラム~総括の画像
「厨房茶房 不忘舎」の手造り照明
「なぜ、日本人はハワイやヨーロッパに旅行に行くのか?」ある日、田島社長はこう思った。
「それは日常の違う文化に触れることに刺激や感動を求めているからではないのか」・・・と。
大げさに言えば、悟りの境地に至ったのかもしれない。
実際、ここはハワイやヨーロッパでもない。
ではどうするか?落ち着いて周辺の状況を眺めてみた。
当時の日本は古いものを壊し、どんどん新しい建物を作っていった時代。
旅館も木造の建物から鉄筋コンクリートの建物にして収容力を増やして、大型化を競っていた時代だった。
現在のような古いものをできるだけ保存していこうという発想はほとんどなかったと言っていい。

そんな中、昭和50年(1975年)、田島社長は商工会から450万円を借り受け、近所の茅葺き屋根の農家の家を移築した。
現在の朝食会場「いちょうの間」である。
壊されつつあった、鹿児島の田舎の生活文化を、「雅叙苑」で継承していこうと決心したのだ。
周辺に建ち並ぶよくある温泉旅館ではなく、個性的で魅力的でオンリーワンの宿を目指そうと考えたわけだ。
つまり、この年が本当の「雅叙苑」のスタートとも言っていい。
遂に方向性を見つけた記念すべき年となった。
世界に目を向ければ、ベトナム戦争が終結したのもこの年だった。
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朝食会場「いちょうの間」
翌年の昭和51年(1976年)、新たに茅葺きの古民家を移築した。
現在の離れ「かぜ」がそうだ。屋根が壊れていたため、無料で引き取れたらしいが、業者に屋根は直してもらい、それ以外の壁などの補修はすべて田島社長と女将さんが行った。
「お金がないから自分でやるしかない。」当たり前のことだった。

昭和52年~53年(1977年~18年)頃になると、茅葺きの古民家をわざわざ移築して旅館を営んでいる"異端"の宿があると、噂が少しずつ広がっていった。
売り上げも年商が1,000万円を超えるようになった。
それでも資金繰りは苦しい。
しかし、売り上げが上昇気流に乗ってきたことに田島夫妻は、心から喜んだ。
そして田島社長は自分の進むべき道は間違っていないと確信できるようになった。
その頃の「雅叙苑」は、創業時に建てた木造2階建ての客室5室と、移築した茅葺きの古民家「かぜ」の合計6室と、同じく茅葺きの食事会場「いちょうの間」という構成で営業していた。
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自家農園で育てた無農薬野菜満載の朝食(2013年2月撮影)

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忘れの里 雅叙苑 宿泊レポート


コラム
コラム

「忘れの里 雅叙苑」は、鹿児島県北部、霧島温泉より南側に位置し、鹿児島空港からクルマで15分のロケーションの妙見温泉にある。妙見温泉は、天降(あもり)川に面していくつかの温泉旅館が建ち並んでいるが、元々は湯治場として地元の人々に愛されてきた素朴な温泉地なのだ.....

貸切&客室露天 レポート
貸切&客室露天 レポート

「忘れの里 雅叙苑」と言えば、部屋に温泉風呂が付いているイメージがあるが、外にも個性的な貸切風呂が用意されている。すべての湯舟が源泉かけ流しで、自家源泉を使用。泉質は「ナトリウム・マグネシウム・カルシウム-炭酸水素塩泉」.....

施設&温泉  レポート
施設&温泉 レポート

「忘れの里 雅叙苑」は、妙見温泉の中心地、天降川(あもりがわ)に沿った細い道を、木の看板を手がかりに坂道を下っていくと辿り着く。敷地は天降川沿いに横長の形。苑内に入ると「この道 にわとり優先」の看板が目に入る。そして、茅葺きの屋根がはっきりと見えてきた.....

客室 レポート
客室 レポート

客室のタイプは大きく分けると5タイプに分けられる。まず全10室中、お風呂リビングは4室、露天風呂付き客室は4室あり、それぞれ独立した離れとなっている。いずれも昔からあった、地元・鹿児島の茅葺きの古民家を移築して、改装したものだ.....

料理 レポート
料理 レポート

まず、「忘れの里 雅叙苑」の料理を紹介する前に、基本の「食材」について説明させていただく。実に驚くべき事だが、実に食材の90%以上は、自給自足で賄っているという点だ。野菜はほぼすべて、「天空の森」の自家菜園で作られている。しかも「オーガニック(有機栽培)」であり「無農薬」.....

おまけ レポート
おまけ

「雅叙苑」のスタッフの接客の基本は、ベッタリお客様にまとわりつくような事はしない。プライベートな空間にはできるだけ近づかないスタンスだ。それでいて、客の要望を汲み取ってくれている。これほどの人気旅館でありながら、敷居の高さを感じさせないのはなぜか?.....

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この宿のキーワード
元祖・露天風呂付き客室の宿
薩摩の生活文化を伝承する「日本旅館」
美肌とリラックス効果のある温泉をかけ流し
無農薬・有機栽培の自家菜園からの食材
新提案・お風呂リビングが大評判
こんな人はOK
・本当の地産池消の料理を食べたい方
・旅館に故郷の郷愁を感じたい方
こんな人はNG
・批評家気取りで粗探しが趣味の方
・賑やかに遊ぶ事が温泉旅行だと思っている方

忘れの里 雅叙苑 基本情報

宿泊情報

IN 14:00
OUT 12:00
カード使用 可(VISA / JCB / AMEX / DINERS / UC / DC / MASTER)
部屋の眺望 川・山
部屋食 食事処「不忘舎」or「いちょうの間」
夕食の内容 自家栽培の野菜や地元の食材をメインとした田舎料理
朝食の内容 お魚と玉子の焼き方をチョイスできる山里料理

宿泊料金 ※料金は1室2名様宿泊時の1名様分 (税込)

公式HPネット予約特典 【ベストレート(最低価格)保証】公式HPからの予約が一番お得な料金になっております。
公式HP予約限定★ワンドリンクサービス:オーガニックソーダ or 本日のおすすめ焼酎(グラス)
お得なプラン インターネット優先プランなど、詳細は公式をチェック★
和室スイート「空(そら)」※2022年リニューアル ¥110,150~
和室25.5帖(ベッド付き)+ 半露天内湯 + 風呂付き縁側 + トイレ(定員2~5名)
和室スイート「光(ひかり)」※2022年リニューアル ¥93,650~
和室24.5帖(ベッド付き)+ 半露天内湯 + 縁側 + トイレ(定員2~5名)
Etype お風呂リビング付離れ特別室「椿」 ¥65,050~
1F:リビング(箱火鉢)+2F:和室6帖+6帖+お風呂リビング+シャワーブース+トイレ(定員2~5名)
Dtype 露天風呂付離れ「かぜ」 ¥50,750~
和室6帖+4.5帖+ウッドテラス+デイベッド+客室露天風呂+露天シャワーブース+トイレ(定員2~4名)
Btype お風呂リビング付離れ ¥44,150~
和室6帖+次の間+お風呂リビング+トイレ。(定員2~3名)

施設情報

創業/改築 創業:1970年(昭和45年)/改築:2022年(令和4年)
部屋数 全8室 (露天風呂付客室8室※お風呂リビング含む)
収容人数 30名
貸切風呂 貸切露天風呂×3(男女別大浴場の時間貸し&うたせ湯・ラムネ湯)
料金 :宿泊の場合 無料
利用時間 :24時間 ※日帰り利用の12:00~15:00以外 ※宿泊客の休前日(繁忙日)の貸切可
予約方法 :予約なし(先着順)
眺望 :川・山
大浴場・他 男女別大浴場(男女の入れ替えなし)
利用時間:24時間 ※清掃時間以外
駐車場 10台
ペット 不可
バリアフリー
エステ・マッサージ あり(天降川沿いのエステルーム「雅叙苑スパ」)
インターネット 全客無線LAN(Wi-Fi)&有線LAN対応
DVD
TVチャンネル NHK2局、民放4局
施設 囲炉裏サロン(カフェ&バー) / 茶房 不忘舎 / お土産処 / エステルーム / 男女別大浴場「建湯」(貸切利用枠あり) / 貸切風呂「うたせラムネ湯」
冷蔵庫のシステム スイッチ付き自動計算(持ち込みのドリンクを入れるスペースあり/冷凍室あり)
自動販売機 なし
売店 あり
浴衣 バスタオル
タオル 石鹸
ボディソープ シャンプー
コンディショナー リンスinシャンプー
シャワーキャップ 歯ブラシ
ドライヤー ブラシ
くし カミソリ
綿棒 洗浄機付きトイレ

その他サービス・レンタル情報

車いす
お子様
外国語

おまけ情報

オススメお土産 地鶏燻製、黒豚ベーコン ※宿のオリジナル
近くのコンビニ 車で10分
携帯アンテナ ◎docomo ◎au ×softbank

貸切利用

料金
利用時間
※食事付きプラン(要予約)
料金
食事の内容
設定日
受付時間
その他

男女別利用

料金
利用時間
その他

忘れの里 雅叙苑 温泉情報

泉質 ①②ナトリウム・カルシウム・マグネシウム-炭酸水素塩泉※混合泉(低張性 弱アルカリ性 温泉)
③単純二酸化炭素泉(※推定/泉質表なし)
源泉の温度 ①37℃ ②54℃ ③不明
湧出量 ①②③合計約200リットル/分
水素イオン ①②pH 6.6 ③不明
溶存物質総量(ガスを除く) ①②1,275mg/kg ③不明
源泉の湧出状況 ①掘削自噴 ②ボーリングしての掘削(動力揚湯) ③自然湧出
※すべて自家源泉
加水/循環ろ過 すべてのお風呂は源泉100%かけ流し。
ただし、夏季は温度調節のため加水する場合あり。
加温 なし
消毒 なし
浴槽の湯の入替 1日1回
入浴剤 不使用
泉質別適応症(平成26年7月1日改定) ①②きりきず、末梢循環障害、冷え性、皮膚乾燥症
③きりきず、末梢循環障害、冷え性、自律神経不安定症
浴用の一般的適応症(平成26年7月1日改定) 筋肉若しくは関節の慢性的な痛みまたはこわばり
( 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、 神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期 )、
運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、 末梢循環障害、胃腸機能の低下
( 胃がもたれる、腸にガスがたまるなど )、 軽症高血圧、 耐糖能異常 ( 糖尿病 )、
軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、
ストレスによる諸症状 ( 睡眠障害、 うつ状態など )、病後回復期、疲労回復、健康増進
湯の色 無色澄明
飲用 不可 ※保健所に飲用申請を不提出
飲用の適応症
におい/味 無臭/苦味・収斂味
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忘れの里 雅叙苑 交通アクセス&周辺情報

交通アクセス

電車 鹿児島市内から林田バス利用の場合、特急で約1時間10分。妙見温泉で下車。
送迎 なし
クルマ ・鹿児島空港よりクルマで約15分。
・九州自動車道・溝辺インターよりクルマで約15分。
・鹿児島市内からは九州自動車道を経由し、クルマで約50分。

周辺情報

周辺観光スポット 和気神社・和気公園、犬飼の滝、霧島神宮・霧島連山
レクリエーション(観光農園、公園など) みやまコンセール
スポーツ
スタッフより 女将 田島悦子さんからのコメント

お客様には非日常の雰囲気の中で時をすごしていただけるように心がけております。
取材日 2018/02/25
一部情報更新日 2023/06/23

※予約問合せの際は、必ず「貸切温泉どっとこむ」を見たと言ってください。

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この宿の記事制作者

温泉コム株式会社 代表取締役

30年以上前から、全国の温泉宿をまわり続け、「貸切風呂」の必要性を宿主に説いていた。 今でも、一年の半分を温泉宿で過ごす旅人でもある。 コラムニスト、カメラマン、ドローンパイロットの他に、ホームページのデザイン、コンサルタント業務もこなす。

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