十勝川温泉第一ホテル　豊洲亭　豆陽亭 とかちがわおんせんだいいちほてる　ほうしゅうてい　とうようてい TokachigawaOnsen Dai_ichi Hotel HOSYU_TEI TOYO_TEI

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「十勝川温泉」の歴史は、そのまま北海道・道東観光の歴史といっても過言ではない。 温泉の記録は1874年（明治7年）の「北海道地誌要領」が最も古く、「音更川湯、河東郡ニアリ、泉質未詳」と記されている。 この一帯は当時、葦の生い茂るような湿地帯で、小さな沼が点在しており、そこに常に生ぬるい湯が湧き出していた。 冬でも凍らない場所があったことから、現在と同じように白鳥などの野鳥が飛来し、エゾシカの群れが餌場にしていたという。

ホテルの前を流れる十勝川～白鳥と鴨の姿に癒される（2007年12月撮影）

1900年（明治33年）には、依馬嘉平（えまかえい）という人物が、自然湧出していたぬるま湯を箱に引き入れて沸かし、その湯を地元住民と楽しんだ事が、この温泉地の発祥とされている。 ただし、この箱風呂は、やはり温度が低かったために利用する者は少なく、明治30年代後半には以前の湿地帯に戻ってしまったと言われている。 その後、1911年（明治44年）に、本別の前田友三郎氏が湯気の立つ湿地を発見し、温泉掘削を開始する。 すると、わずか6mほど掘ったところで、30℃の湯が湧き出したという。 そして、小さな家屋を建て、温泉宿の経営を始めた。 その数年後、当時帯広にあった旅館を買収し、この地に移設。 原野の中にひと際目立つ立派な宿が建ち、次々とお客が訪れるようになった。 ところが翌年、こんな野原の一軒宿で相当に儲かっているとふんだのか、強盗に襲われる事件が発生する。 この時、友三郎氏は強盗を撃退したものの、海軍ナイフで切りつけられ、傷は6ヶ所にものぼったという。 血まみれの状態になった友三郎氏であったが、医者にはかからず、温泉の湯と自己流の手当てを施すと、間もなく完治したという。 この事件をきっかけに、付近の住民も「薬湯」だとして、評判になっていったという。

明治時代より「薬湯」として地元の人に利用された「植物性モール温泉」

「十勝川温泉」の礎を築き、発展させたとされる人物が、林豊洲（はやしほうしゅう）氏だ。 「十勝川温泉第一ホテル」の現社長である林文昭氏の祖父にあたる。 大分県臼杵市の出身の豊洲氏は、若い時分より帯広の市内で働いていた。 そして1919年（大正8年）、30歳にして「十勝毎日新聞」を創業。 と同時に、地元産業の振興のほか、然別湖と糠平（ぬかびら）の国立公園編入運動にも奔走していた。 豊洲氏は、大分にいた頃、別府温泉の繁栄を知っていた。 九州から北の大地に移り住み、ジャーナリストとして、観光開発による道東の発展に寄与しようと志したのであろう。

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