伊豆半島の南西に位置する堂ヶ島温泉は、西伊豆エリアではあるが、土肥より約20km南下した海岸線にある。伊豆の最南端の石廊崎までも40qほどだ。
堂ヶ島は、伊豆半島屈指の美しいリアス式海岸が広がり、景勝地も多い場所でもある。
「堂ヶ島ホテル天遊」は、その堂ヶ島温泉の中でも、一番の景勝地「三四郎島」を真正面から見られるといった絶好のロケーションに建つ宿なのだ。
まず、チェックインしてロビーで荷をおろすやいなや、大きなガラス窓の向こうに佇む「三四郎島」が圧倒的な迫力で目に入ってくる。
3つ横に並んで見えるその島は、左から「象島(伝兵衛島)」「中ノ島」「高島(鷹島)」と呼ばれている。これらが3つ揃って眺められるのは、堂ヶ島温泉エリアではここ「ホテル天遊」のみらしい。
「三四郎島」は「トンボロ現象」の島として知られている。それは、ふだん海に沈んでいるところが、潮が引くことによって陸地が現れることをいい、世界的にも有名なのが以前の「モンサンミッシェル」(フランス・世界遺産に登録)だ。ただし「三四郎島」は、10月から2月の日中は、瀬が現れるほどに潮は引かないので、渡ることはできない。3月から9月の日中であれば、比較的渡ることが可能。しかし毎日ではないので注意。
「三四郎島」の名前の由来は諸説あるが、見る角度によって3つに見えたり、4つに見えたりするからとの説と、小雪の悲恋伝説などもある。それは、源氏がまだ平家に劣勢だった頃、”伊豆の三四郎”と呼ばれる若武者が、中の島に厳しい平家の追求の目を逃れて隠れ住んでいた。治承4年、源頼朝が仁科の豪族・瀬尾行信のもとへ出陣の急使を走らせた。行信は三四郎のもとにも、その出陣の書状を渡さなければならない。しかし、満ち潮のため「中の島」までの陸路は閉ざされていた。三四郎に恋心を抱いている行信の一人娘・小雪は、出陣の書状を抱きしめ、海に飛び込み島へ渡ろうとしたが、波は凄まじく、小雪はついに海間にその姿を消してしまった。
「三四郎島」の一番左手の島は象が座っている後ろ姿に似ているところから「象島(伝兵衛島)」と呼ばれている。ちなみにその島の先に見える尖った岬は「烏帽子山」。烏帽子山の雲見浅間神社(くもみせんげんじんじゃ)の祭神は磐長姫命(いわながひめのみこと)で、富士山の木花開耶姫命(このはなさくやひめのみこと)のお姉さんにあたる。美人の妹(富士山)に嫉妬した醜女の姉(烏帽子山)がいじけて雲見に逃れた。 江戸時代の国学者、本居宣長の「古事記伝」には、優しい妹は姉を心配して背伸びをして捜したのでどんどん背が高く美しくなったと記されている。今でも雲見の人は、磐長姫命に遠慮して富士山へは登らないという。 烏帽子山が晴れる時は富士山が雲におおわれ、富士山が晴れる時は烏帽子山付近の天気が悪くなる、との言い伝えもある。烏帽子山で富士山を誉め賛えると振り落とされる・・・という話もあるらしい。似たような話は全国にいくつかある。例えば八ヶ岳と富士山の関係もそうだ。
「中ノ島」は、「三四郎島」の真ん中の島。波に浸食された影響か、洞窟がいくつか確認できる。
「三四郎島」は、実は3つの島ではなくて、中央の「中ノ島」と左手の「高島」の間に「沖ノ瀬島」という小さな島がある。
また、ホテルから海岸線に向って下るように、遊歩道「潮騒の小道」が整備されており、途中に展望デッキ(3ヶ所)も置かれている。
その先の海岸には、プライベートビーチも所有している。夏は海水浴はもちろんシュノーケリングをする人も多い。アオリイカやたくさんの魚で出会えるはずだ。
夏季以外でもホテル専用の磯釣り場もあるので、一年中楽しめる場所でもある。亀の手のような形をした「セイ」(貝の一種)、フジツボ、デンゴサザエ(こすれあってツノが取れたサザエ)、ヒジキなどが獲れるという。
またガーデンプールも夏の間だけオープンする。海に浮かんでいるような感覚にもなる稀有なプールだ。
そして、やっぱり伊豆といえば、温泉はかかせない。泉質は「カルシウム・ナトリウム−塩化物泉」。pH8.8のアルカリ性の柔らかい感触のお湯となっている。男女別大浴場の露天風呂は、崖の上のようなロケーションなので、駿河湾のパノラマを堪能できる。「三四郎島」が目の前だ。
露天風呂付き客室「001号室」は、平成18年に新たに造られたスタイリッシュな客室だ。32インチTVにソファー、テーブルのある洋室のダブルベッドルームだ。客室露天風呂にシャワーブースも備わる。床暖房の設備もあり。象島を望むテラスにはカウンターテーブルが備わっている。
どこかリゾート気分を味あわせてくれる、お二人様専用の客室ならここだろう。
「001号室は」4階建てのホテルからすると、一番下の階にある(B1扱い)。1Fにはフロント、売店、ロビーがあるが、メインの客室は2Fと3Fに配されている。
特別室(和洋室)「301号室」は角部屋で、和室10帖(23インチTV)+ツインベッドルーム(25インチTV)+踏込2帖+バルコニー+BT付き。記念日旅行に最適な客室だろう。
「201号室」も角部屋。リピーターが多い人気の客室がここだ。和室12.5帖(23インチTV)+縁(イス・テーブル)+バルコニー+BT付き。
「307号室」は、海と山に面した角部屋。和室12.5帖(23インチTV)+縁(イス・テーブル)+バルコニー+BT付き。
「305号室」は、和室12帖+縁(イス・テーブル)+バルコニー+BT付き。
「306号室」は、和室10帖+縁(イス・テーブル)+バルコニー+BT付き。
「302号室」は、和室10帖+縁(イス・テーブル)+バルコニー+ユニットバス。和室の中では一番小さい部屋。
「209号室」は、洋室。海が見えるが、窓下は駐車場。ツインベッドルーム(25インチTV)+ユニットバス。「208号室」も同様。
いずれの客室からも駿河湾のオーシャンビューなのだから、海好きな方にはどれをとっても最高の客室だろう。
2007年4月に日本テレビ制作の特別ドラマで、「ロミオとジュリエット」が放送された。主演はタッキーこと滝沢秀明(タッキー&翼)と長澤まさみだ。そのロケで堂ヶ島に訪れ、この「ホテル天遊」にその年の3月に宿泊した。
タッキーは露天風呂付き客室「001号室」に宿泊したが、長澤まさみは眺望の優れた広い特別室の「301号室」に宿泊する予定であったが、本人いわく「1人では広すぎて恐い!」とのことで、急遽一番狭い和室「302号室」に変更したエピソードを残した。
ここで取材時の夕食(2008年4月初旬)をご紹介しよう。2名1室1名様料金18,000円の献立がこれだ。
食前酒は東伊豆のみかんワイン。先附はマグロのスモークマリネ。焼津産のマメジ(本マグロの子供)がおいしい。前菜としては、明日葉の胡麻和え、牛肉と筍の挟み焼き、サザエ(地のサザエを煮たもの)。
お造りは、あわび、ヒラメ、アオリイカ、海老、マグロ。アワビは南伊豆、ヒラメ、アオリイカは地のものだ。
煮物は、金目鯛の煮付け。筍と菜花(千葉産)といっしょにいただく。
焼物は、鰆(サワラ)の幽庵焼(ゆうあんやき)。幽庵焼とは、茶人の堅田幽庵が考案した調理方法で、醤油、酒、味醂、そして柚子の輪切りを入れた漬けダレに漬け込み、その後焼き上げたもの。サワラは沼津産。
蒸し物は、豚ロースと野菜のセイロ蒸し。特製のタレでいただく。これは、土佐酢とポン酢を均等に混ぜたものにミキサーにかけたゴマを和えたもの。野菜は、キャベツ、モヤシ、ニンジン、シメジ、タマネギ。
台の物は、アワビのおどり蒸し。酒を張って香りをつけ柔らかくしてある。このアワビも南伊豆産だ。
揚物は東寺揚。中身はカニ爪、ホタテ、エビ。東寺揚げとは、東寺で湯葉が作られていたところから、その湯葉で巻いて揚げたものが東寺揚げと呼ばれるようになった。
酢物は、富山産のホタルイカとカニの酢味噌掛け。
締めは、地のものを使ったタケノコご飯。吸物は沼津産の真鯛の桜香仕立て。これは、桜葉の塩漬けの芯を取ったものを入れて香りつけした。花びら百合根も入っていた。香の物3点のきゅうり、にんじん、かぶは自家製。
デザートは、自家製のわらび餅とパイナップル、いちご(福岡産のあまおう)。
あわびは、おどり焼や、バター焼などリクエストにも応えられるとの事。料理長・山本邦彦さんの真面目さがにじみ出る極上の献立であった。
朝食も美味しい。生ハムに、水菜、キャベツ、セロリ、にんじん、ブロッコリー、トマトが入ったサラダや、地のアジの開き、ぶり大根、まぐろ山かけ、ひじき、目玉焼き、わかめ・豆腐・ねぎの味噌汁・・・などメニューも豊富だ。はまぐりの佃煮、ちびきゅう(ピリ辛みそ)などはお土産コーナーでも販売している。デザートはクコの実入り自家製ヨーグルト。
この宿に泊まったら、堂ヶ島クルーズはかかせない。堂ヶ島の海岸線は、リアス式で変化に富み、国立公園や名勝伊豆西海岸などの指定を受けた景勝地が数多く存在する。特に天窓洞などが有名。人によっては、イタリア・青の洞窟(カプリ島)より美しいと言われる堂ヶ島の洞窟めぐり遊覧船は、堂ヶ島マリンが運営していて、「ホテル天遊」からほど近いところが発着所となる。
また、お花が好きな方ならオススメなのが「らんの里 堂ヶ島」。常に10,000鉢のランの花が咲き、貴重な種類のランの展示も行っているとの事。
「天遊」には「高濃度酸素カプセル」が置かれてあった。「ベッカム・カプセル」として有名となった「高濃度酸素カプセル」がそれだ。疲れが取れると評判で利用料は50分5,000円。女性ならフェイシャルエステを施術後に入るのがオススメとの事。
フェイシャルエステも受けられる。メニューは、超音波クレンジング+エフェクト(温泉成分入りパック)3,000円、小顔リンパマッサージ3,000円など。「高濃度酸素カプセル」との併用がオススメらしい。その場合、1,000円の割引となる。
「ホテル天遊」は、堂ヶ島温泉の人気旅館「小松ビューホテル」「海辺のかくれ湯 清流」の姉妹館として平成15年にオープンした。新築ではなく、生命保険会社が運営していたホテルを買収してリニューアルし、宿名も改称したわけだ。ちなみに「小松ビューホテル」の男女別露天風呂は、映画「失楽園」(出演:黒木瞳・役所広司/監督:森田芳光/原作:渡辺淳一)の中で、貸切露天風呂として主人公二人の入浴シーンで使われたことは有名だ。ちなみに「天遊」に宿泊すれば「小松ビューホテル」の温泉施設は自由に利用できる。
グループ(小松観光株式会社)の宿の中では「天遊」は、客室数20室ということもあり、団体旅行ではなく個人客向けに特化した宿とも言える。
この宿を指揮しているのが、女将の加藤典子さん。先代の創業社長の娘さんにあたる。エステサロンも女将自ら施術する。それを見ても、女将さんのこの宿に対する愛情が分かるというもの。
「堂ヶ島ホテル天遊」には、自然に囲まれた環境や、三四郎島をはじめとする岩礁と海岸線の美しさ、磯遊びができるプライベートビーチ・・・など、魅力溢れる要素がいっぱい詰まっている。
買収して初めて作った露天風呂付き客室「001号室」など、これからも面白い、楽しい客室など、どんどんリニューアルしていくのだろうが、現在の「天遊」にも、これだけの環境があるおかげで充分にアピールするスペックは持ち合わせている。
だからこそ、テレビなどの取材も多い。テレビ朝日系「旅の香り」では、勝野洋、キャシー中島夫妻。その他、阿藤快、ナインティナインの岡村隆史なども訪れている。さらに、北島三郎の事務所の北山たけしも、カラオケのPVの撮影で来館していた。また、芸能人著名人のプライベート旅行も多いとの事。
堂ヶ島は首都圏からドライブしてくるには、東伊豆と比べれば遠い事は確かだが、その分海岸線や伊豆の山々を眺めながらのドライブは、楽しい事は間違いない。また、この宿の使い方を考えれば、ご両親を招待しての孝行旅行などには最適なところでもある。
ぜひ、この伊豆の中でも風光明媚という言葉が一番当てはまると言っていい堂ヶ島。その一番のロケーションに佇む「天遊」に足を運んではいかがだろうか。(J)