積翠寺温泉　古湯坊　坐忘庵 せきすいじおんせん こゆぼう ざぼうあん Sekisuiji-onsen Koyubou ZABOUAN　

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現在の館主は、十八代目の保坂実さん（昭和42年生まれ）。 実さんは、先代の次男として生まれ、この山の中で育ち、今は経営者であると同時に総料理長でもある。 学校卒業後に料理の道に入り、名古屋、京都、金沢の料亭で十数年修行。 特に金沢が一番長く、ある旅館の料理長を務めていた。 また、実さんが金沢にいた頃、三男の学さん（現専務、昭和46年生まれ）も偶然、金沢で営業の仕事に従事していた。 実さんは、宿は長男が継ぐものとばかり思っていたが、彼は東京で別の仕事を続けることを決め、2002年に宿に戻り、実さんと弟の学さんの兄弟で宿を継ぐことになった。 ちなみに、先代の社長である保坂司さん（十七代目）は、サッカー日本代表の正ゴールキーパーだった事（1960年代前半頃）は地元ではよく知られている。 その司さんは、現在のＪリーグのヴァンフォーレ甲府の前身である甲府クラブの監督も歴任した地元の著名人なのだ。 現在の社長も高校サッカー全国大会で活躍したというから、やはり血は受け継がれていくのだと実感する。 故郷に帰ってきた十八代目と専務の学さんは、まず旅館とは何ぞやというところから勉強を始めた。 それこそ、予約の仕方、接客など基本から学んでいったという。 とにかく宿を維持しなければならない。 兄弟で支えないといけなかった。 実は、彼らが宿に入った頃は、宿の経営状況がひっ迫していたのだ。 その兄弟という背骨が、折れると終わり・・・、常に背水の陣の心持ちだった。 だが、悲壮感はなかった。

そこには、自由にやれる楽しさがあり、それまでの既成概念にとらわれず、改革を実行していくことができたという。 まず、それまで無かった露天風呂を、兄弟で一緒に、手造りで作り上げた。 一歩ずつ、繁盛旅館に近づいていった。

十八代目與五兵衛・保坂実氏

保坂兄弟が作った露天風呂「竹林の湯」

その頃の客層を言えば、年間を通して8～9割は団体客だったという。 しかし保坂兄弟は、「山奥の温泉場だからこそ、静かに過ごすお客さんを大事に」という方向性を目指した。 自分たちの旅館として、"カラー"を打ち出していこうという気持ちが高まってきたのだ。 旅館という伝統に縛られず、旅館としてタブーということも試みた時期もあったそうだ。 この10年間は、団体客から個人客への移行期として位置付けられ、最終的に個人のみ、常連客で宿が成り立っていくことを保坂兄弟は目指している。 ゆえに、団体客を連れてくる旅行会社から、怒られることもしばしばだったという。 そんな十八代目の、何物にもとらわれない自由な姿勢が、館内に20数点飾られている自由書画からもうかがえる。 とても伸びやかな柔らかい書風で、人柄を感じさせる。

館主の書

そんな十八代目の実さんだが、普段は総料理長でもあり、お客様と直に会う機会はなかなかない。 しかし、本当のところは、お客様との会話が大好きだという。 今後の構想は、カウンター形式で、オープンキッチンのように館主自らが直接接客できる形を作りたいとのこと。

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