「民芸の宿 雲仙福田屋」はもともと昭和元年(1925年)、写真撮影業を開業したことが商売の始まりだった。
その後は現在も続いている酒屋に転業し、「ホテルニュー雲仙」という屋号で、全39室の宿を創業したのは昭和43年(1968年)のこと。
その時の初代社長は福田力さん。老舗の大型旅館が建ち並ぶ雲仙温泉の中にあって、あえて中規模な旅館を創り、他の宿との差別化を計ったのだ。
昭和63年(1988年)にはロビーや客室の一部を民芸調にリニューアルし、屋号を「民芸の宿 雲仙福田屋」と改称した。
その後も福田前社長は次々とユニークなアイデアを産み出し、この宿を指揮してきた。
平成17年ごろには社長業を息子(二代目)に託したが、現在でも大工仕事を手がけるほど宿を愛している。
しかしその頃、普賢岳の噴火や景気後退を受け、宿泊客は減少傾向にあり、 また設備投資の資金も充分に捻出できず、厳しい経営状況が続いていた。
そして「民芸の宿 雲仙福田屋」を含む、雲仙の旅館・ホテル4軒が一体化し「有限会社雲仙湯けむりリゾート」を設立した。
この時の模様は以前、テレビ東京系列「ガイアの夜明け」に於いて、「湯けむりサバイバル〜旅館再生に挑む請負人たち〜」という回で放送された。
二代目の社長となった福田努さん(昭和39年生)は、初代に負けず劣らずのアイデアで、新たな支援を受けながら宿の改革に乗り出した。
それほど広いわけではない館内に楽しみを充満させ、宿泊客を飽きさせないサービスを次々と打ち出した。
全国の旅館に先駆けて電子マネーEdyを導入し、ドコモのお財布携帯の利用も可能にした。
お客の要望にはすぐに応えていくため、設備は充実していく一方。
その結果、他の宿にはない「福田屋ワールド」を作り出したといえる。
福田社長は他の宿に頻繁に出かけては、メモ帳一杯にアイデアを書き込んで帰ってくるという勉強家。
趣味は古き良き歌謡曲のレコード収集。"懐かしタイム"と称し、自慢のコレクションを展示することもあるとか。
また福田社長は元読売ジャイアンツ、現在ボルティモア・オリオールズで活躍する上原浩治投手に顔がそっくりと雲仙では有名だ。親しみやすい気さくな性格も上原選手に似ている。
公式HPを見ると宿泊プランにも面白いアイデアが反映されているようだ。
まずスタンダードプランとなるのが「トリプルチョイスプラン」。こちらは夕食の「焼き物」、「刺身」、「鍋物」、「デザート」、「貸切風呂」が選べるプラン。すでに"トリプル"を超えているところもご愛敬。
また公式HP限定で「呑みくらべセット」か「瓶牛乳」もチョイスし、無料サービスされる。
これだけついて大人2名で宿泊時のお一人様料金は11,000円〜(繁忙期は13,000円〜)と大変リーズナブルなのもポイントが高い。
期間限定のお得なプランでは「早得、早割、ファミリープラン」がある。こちらは2週間前までの予約で宿泊料金が割安になるという物で、大人2名様につき、子ども1名様無料となる。
平成21年6月に行っていたユニークなものが「DOKI・DOKIプラン」。こちらはくじ引きをし、予約の入っていないグレードの高い客室に当れば、お得な料金で宿泊できるというゲーム性の高いプランだった。「宿側としてもドキドキした」と福田社長は振り返っていた。
他にも大人一人につきガソリンが5リットルプレゼントされる「ガソリンプラン」や、マイ箸やマイ歯ブラシを持ち込む「ECO割プラン」などなどある。
そのプランの多さに戸惑うが、どれもがお得なプランになっているので、ゆっくり吟味していただきたい。
現在の「雲仙福田屋」には日常必要なものは、ほとんど揃っていると言っていいかもしれない。
「これは旅館だからないだろう」、「これは我慢しなければならないな」などと思う事はほとんどないような気がする。
「日常」と「非日常」の真ん中にこの宿は存在する。だからこそ居心地の良さに繋がっているのかもしれない。
ベッドと畳を組み合わせたハイカラルームも、一見狭いような印象を受けたが、時間が経つとその狭さが、ちょうどいい空間に感じてくるから不思議だ。機能的な設計の賜物だろう。
この宿はある規模を持った旅館ながら、なぜか優しい家庭的な温かみも感じる。
それは福田社長と奥さんで若女将の真紀さんの仲睦まじい空気がそうさせているのかもしれない。
温かい宿の雰囲気はスタッフの意識の中にも表れている。
以前の取材でこんなことがあった。
夜中、露天風呂に入った50代の男性客がフロントに怒鳴り込んできた。
「ゲジゲジがいるから何とかせい!」と。
私は、「こんな大自然の真ん中にいるのだから虫がいて当たり前。逆にいないとおかしいでしょう!」とそのお客に言いたくなったが・・・(女の子や子供じゃあるまいし・・・)。
すると、接客マネージャーは丁寧に謝り、その態度にお客も落ち着いて部屋に戻っていった。
そしてそのマネージャーは電話でスタッフに指示し、すぐそのゲジゲジを退治するように命じたのだが、その言葉の最後に、「危ないから、かまれないように注意してね」とスタッフに告げていた。
お客だけでなくスタッフにまで優しいその言葉に、ふっと心が和んでしまった。
「福田屋」の人気の秘密を、ひとつ垣間見たような気がした。
こんな温かい雰囲気は宿全体で感じられ、本当に宿泊客を和ませてくれる。
そして源泉かけ流しの極上の硫黄泉も貸切で楽しめる。
ファミリーから小さな子ども連れのファミリー、若いご夫婦やカップル、観光目的の女性グループまで包み込んでくれる要素がある。
「ふろでゆっくり」「くつろいで」「だれもが和む」「やどが福田屋」の頭文字を繋げると「福田屋」となる。まさにこの宿にふさわしいキャッチフレーズと言えるだろう。
この宿は現在、雲仙温泉で一、二を争う人気旅館となった。
それは、やはり宿泊料金以上に充実したサービスがあるからこそ。
コストパフォーマンスが高いから、リピーター客も多く生まれる。
その相乗効果が、この宿の現在の繁盛振りに表れている。
この規模でありながら、家庭的な雰囲気がある、アンバランスさが「雲仙福田屋」の最大の魅力のようだ。(J/IZ)