この宿の料理長は、オーナーの福田朋子さん。
女性ならではの、上品な味付け、ビジュアルの美しさ、繊細な盛り付けなどが、ゲストをもてなす。
以前は、料理人を雇っていたが、彼女自身の理想は高く、他の旅館では充分に及第点のレベルの料理人でも、許せなかったのであろう。
そして、自ら包丁を握ることになったのだ。
彼女自ら、素材を仕入れ、献立を構成し、調理する。
このことにより、彼女ならではのゲストに対する最大限の感謝の気持ちを表現しているのだ。
その「ほたるの長屋」の食事は、基本部屋出しとなる。夕食、朝食とも誰にも気兼ねせず、食事が楽しめるだろう。
またリクエストで、お部屋食ではなく、個室食事処「ほの字」でいただくことも可能との事。
今回取材(2009年10月下旬)でいただいたのは、スタンダードメニューで、旬の食材を使った和会席。盛り付けなどは洋の要素も取り入れ、彩り鮮やかな料理が並ぶ。
食前酒は、桂花酒。
強い甘みと豊かな香りが食欲をそそる。中国の楊貴妃も愛したお酒として、伝えられている。
前菜は、“平山郷 季節膳”。地元の食材を中心とした目にも楽しい一品。
その内容は、姫りんごの栗グラタン、鴨ローストとネギ串、秋刀魚蒲焼、ナマコ、松茸とチンゲン菜の煮びたし、甘エビのめんたいよごし。
お造りは、旬魚で、天草アジ、マグロ、カンパチ、サザエなどが、豪快に盛り付けられている。
新鮮な魚類は、全て福岡県南部の大牟田港で仕入れているとのこと。
刺身の2品目は、熊本名物の馬刺し。
地元・山鹿市内の牧場で育った馬肉は、適度な歯ごたえがたまらない。醤油か、生姜でさっぱりといただく。
季節の汁物は、里芋すり流し。
体の芯から温まる。中には、軽く焼いたきりたんぽが入っている心遣い。添えられた柿の葉っぱも可愛いらしい。
焼物は、牡蠣の二色田楽。
岩手・三陸海岸で獲れた牡蠣を、お一人様3個ずつ、贅沢に食す。田楽味噌、ゆず味噌、カボスの3種類の味で楽しめる。
続いて、蒸し物は、黒豚と地野菜のにぎやか蒸し。
地元の新鮮な野菜は、かぼちゃ、パプリカ、ひらたけで、白菜やスティックセニョールが、極上の豚肉に巻かれている。
もやしを巻いているのは、熊本名産の南関あげ。ゆず、かぼす、ポン酢で作った特製のタレでいただく。
揚げ物は、野菜の天ぷら。洋皿のような繊細で、美しい盛り付けはやはり女性に好評だ。
銀杏、無花果、モロッコいんげん、タタミイワシ、梅干しとバラエティに富む。散りばめられているのは、茶塩で、ゆずのタバスコ「ゆずスコ」がアクセントとなる。
揚げ物の後のお口直しは、あっさりとした冷製リンゴ酢。近所の農家から購入しているというヤーコン、赤大根、リンゴが入る。
肉料理は、朴葉焼き。
佐賀県や山口県などのその日一番の牛肉を選んでいるという。この日は、佐賀牛のヒレをいただいた。
食事は、菜の花米、香の物、川ガニ汁。
近所の知り合いの農家から直接仕入れているという“菜の花米“は、九州米サミットにおいて最優秀賞を受賞している品種。
平山は寒暖の差が激しく、水も綺麗なので美味しい米を作る条件が整っているのだ。菜の花を肥料とした有機農法で栽培されており、栄養価も高い。
小粒で細長いお米で、モチモチとした食感がくせになる。
川ガニ汁は、山鹿市お隣りの菊池渓谷で獲れる川ガニ(モズクガニ)の旨みが凝縮した味噌汁。
この日の甘味は、ぜんざい。甘すぎない上品な味。和のデザートもたまに食べると美味いということが実感できた。
以上が今回取材したスタンダードなメニュー。豪華でありながら体にやさしい品揃えで、食材の良さも際立っていた。
客室でゆっくりと極上の会席を味わう。これほどの贅沢は、日常では、なかなか味わえないだろう。
現在、この宿の料理は、オーナーの福田朋子さん主導で作られている。華やかな盛り付け、繊細な味付けで、女性客に非常に好評をいただいている。

朝食は、体にやさしい料理が並ぶ。
最初にいただいたのは、朝のお腹にうれしいフレッシュなバナナジュース。甘さ控えめであっさりとした味。
焼き魚は、ほっけで、一夜干ししたものを白焼きにした。温かい鍋物は、湯豆腐。中には、ゆばとトロロ昆布が入っている。かつお節など薬味をかけて。
その横には、温たまご。アルペンザルツの岩塩に付けて食す。竹筒の中の、塩海苔もたんなる味付け海苔と比べて、格段に美味しい。
その他、重箱の中に7つの小鉢。大津からいも柚子ジャム風味、ナス味噌煮、ひじきごぼう、煮物炊き合せ、海草サラダ、刺身こんにゃくとからし酢味噌、長いも(もろ味噌入り)と、素材にこだわったラインナップ。
ほかにご飯、味噌汁、香の物が並ぶ。ご飯は釜で炊き立てをいただく、地元の菜の花米。
食後のドリンクは、コーヒー、ウーロン茶、オレンジジュースから選択できる。
「ほたるの長屋」では、2009年11月現在、日帰りプランを行っている。
3時間ステイ(休前日を除く12:00〜15:00)の場合、お昼12時にチェックインし、お部屋で豪華なランチ会席をいただくことができるのだ。目に鮮やかな前菜が、竹かごに盛られてくる。
中心の小皿には、秋刀魚蒲焼と田舎煮。その横には、薔薇の花弁を模した、馬刺し。黄色の花びらが特徴的な花オクラは、酢とともにいただく。他に、大津カライモゆずみつ煮、チンゲン菜煮びたし、柿胡麻和え、刺身こんにゃく、なす田楽などがカゴの中で、それぞれの個性を放っていた。
お造りは、連子鯛の湯引き。連子鯛とはキダイのことで、西日本に多く生息する魚だ。他に、サザエ、ヒラメが盛られている。
季節のスープは、栗のポタージュスープ。やさしい味に、心から温まる。
焼物は、マグロのかま炙り焼き。一口頬張れば、たっぷりの身とゼラチン質が、何とも言えない味わいを醸し出す。
おしのぎは、黒米と地ごぼうのドリア。黒米は、白米と比べて、たんぱく質やビタミン類が豊富で、滋養強壮にも優れている。
肉・麺・揚げと、3拍子そろったシメのお食事。サーロインステーキは、佐賀県産や山口県産のその日一番いい牛肉を使用。蕎麦は、喉越しのいい田舎蕎麦。揚物は、ナス、南瓜、モロッコいんげんの天ぷらで、蕎麦との相性が抜群。さらに、カクテルグラスには、冬瓜のりんご酢。
ご飯は、地元の菜の花米で、しじみの赤だしと、香の物もつく。
デザートは、バニラと抹茶のアイスクリーム。大きな柿の葉が、色を添えている。
人気の別注メニューが、鶏めし。
厳選した鶏肉を使用したこの炊き込みご飯は、満腹になった後でも食べられる旨さ。
他に、昼食メニューでは、地元の人にも人気の「わっぱ蕎麦」がオススメ。確かな喉越しの田舎蕎麦が絶品だ。わっぱとは秋田の伝統的な工芸品で曲げ物の器のこと。
山葵は長野県安曇野産の“大王わさび”を自分で擦っていただく。