| 「丸長旅館」での食事は2種類備わった食事処でいただく。
テーブル席がご希望の方は「啓酔庵(けいすいあん)」という食事処にご案内。青杉やケヤキを使用した落ち着いた雰囲気の茶房だ。昼食の営業もしており、昼の会席コース(5,000円)、ステーキ丼(1,500円)、湯葉丼(1,000円)などは地元の人に好評を博している。(要予約)
個室でゆっくりしたい方は掘りごたつのある食事処で誰に気兼ねすることなく食事が楽しめる。
取材時(2009年5月)にいただいたのは「皐月の献立」。丸長旅館の料理は、その季節に合わせた旬の食材を中心とした、上品な会席料理となる。一品一品ご紹介しよう。
始めにいただいたのは食前酒の枇杷酒。
竹田市近郊で採れた枇杷で作られたお酒は食前に合う。季節によってはイチゴ、サクランボ、だいだいなどに変わるとのこと。
先付けは引き上げ湯葉。
こちらは厳選した大豆と、地元のきれいな水で毎日引き上げているという湯葉となる。生姜とともにいただく人気メニューだ。
前菜は芹のお浸し、海老蒲鉾、茗荷寿司、笹寿司、コンニャク旨煮、蕗(ふき)の東寺巻き、空豆のおかき揚げ、サーモンの蓮根、厚焼き玉子、合鴨ロース、春キャベツと11品が美しく盛りつけられる。
芹は宿の前を流れる「芹川」で採れたもの。笹寿司は鯛をチマキ型の寿司にあしらった。厚焼き玉子は蒲鉾のような変わった食感が珍しい。春キャベツは蕗味噌を巻いた一品。
お椀替りは蓬豆腐にたたき蕨、山葵、赤ピーマンが添えられる。
蓬のしっかりとした苦味が感じられ、その緑と赤ピーマンとのコントラストも鮮やか。
向付けはエノハ、鯛、あしらい一式。
“エノハ”は山女やアマゴを一まとめにした呼称で、九州の一部の地域でそう呼んでいる。川魚特有の臭みがないので刺身にしても美味しい。
焚合せは飛竜頭、焼筍、万願寺しし唐。
飛竜頭とは豆腐をつぶし、野菜をつめて揚げた精進料理の一種。筍はその日に採れたという孟宗竹を使用。万願寺しし唐は通常のものよりも大きく、甘みがあり、食べやすいことが特徴的だ。
揚げ物はエノハの唐揚げ、山菜。エノハの唐揚げはこの地区の名物料理。からっと揚げた淡泊な白身は絶品だ。山菜の天ぷらとともにおろしとつゆでいただく。
煮物はじゃが芋饅頭。
じゃが芋の中に鳥ミンチを入れ、軽く揚げて饅頭にしたこちらはやさしい味。もみじ麩と青豆を添え、彩りもいい。
御飯物は焼きおにぎり茶漬け。
こちらはスタッフのまかないだったものを一度お客に出したところ、好評を得たのでメニューに取り入れたのだという。添え物は山葵か梅肉を選択する。御飯物は土鍋の白米に変更が可能だ。
水菓子は黒蜜と黄粉のアイス。
茗荷の砂糖漬けが添えられ、これが非常に上品な甘さ。イチゴも添えられ、爽やかな甘さも楽しめる。
以上が今回いただいた「皐月の献立」だ。肉類よりも野菜を中心とした、ヘルシーで上品なラインナップ。それでいて手間のかかったお皿が多く、並々ならぬこだわりも感じられる。これぞプロフェッショナルの料理といった感がある。
別注料理としては「スポネの茶碗蒸し」がお勧め。現在長湯ではスッポンを"スポネ"と称し、各宿で売り出している。
美容と健康にいいスッポンと温泉の相性は抜群だ。
朝食もお腹にやさしい料理が並ぶ。
3つの小皿はこんぶの佃煮(かつぶしのりがけ)、ホウレン草のお浸し、おろしのかつぶしがけ。ざる豆腐にはネギと生姜が添えられる。
煮物はシイタケ、かぼちゃ、切干大根、絹サヤ豆。
玉子は目玉焼き、出汁巻き、温泉玉子、生卵から選択ができる。地元の新鮮な餌にこだわって飼育された鶏卵はどれも絶品。
味噌汁は焼いたアゲ、ワカメ、里芋の具が入る。香の物は梅干し、きゅうり、高菜。
ご飯はお客の朝食時間に合わせ、土鍋で炊きわけている。新潟の知り合いから取り寄せているというコシヒカリは掛け値なしにうまい。
以上が取材時の朝食メニュー。やはりヘルシーな食材が中心で、朝のお腹にも優しい。普段朝食は余り食べないという方も美味しくいただけるだろう。
「丸長旅館」で料理の腕をふるうのはオーナー料理長の伊東義文さん。料理長のやさしい人柄と上品な料理は通ずるものがある。
また「できるだけお客さんのタイミングに合わせる」ことを第一に考え、料理を提供しているとのこと。
料理は出来立てが旨いということを真面目に遂行しており、当たり前のことかもしれないが、食事する人にとってみれば大変喜ばしい。
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