デザイナーズ旅館。近頃、よく耳にするようになった言葉だ。従来の数寄屋造に代表される、いわゆる“和風旅館”に対し、新進気鋭のデザイナーや空間プロデューサーによる宿のコンセプトを強く前面に押し出し、既成概念にとらわれない設計・デザインが特徴。和洋折衷という言葉もあるが、こういったものが現代デザインの和の形態なのかも知れない。もちろん見た目が斬新なだけではない。リノベーションによる、施設の機能・性能的な向上で、従来よりも幅の広い選択ができるようになり、新たな価値・サービスを見出すことが可能になった。全体的に、少客室で密度の高いサービス、部屋ごとの特徴づけ、がなされている傾向がある。

今回は当サイト掲載旅館から下記の旅館をピックアップ。予約を取るのも一苦労なところが多いが、それだけの価値がある宿ともいえる。

全室露天風呂付の近代和風旅館

　水上温泉をさらに山側に入った谷川温泉の老舗「旅館たにがわ」の“別館”としてオープンした仙寿庵は、建築デザイナーが設計を手がけた、いわゆる「デザイナーズ旅館」といえる。大自然の中に抱かれた山の宿でありながら、フロントから客室へ向かう曲線のガラス張りの廊下など、新旧の建築様式をうまく配した館内は、日常とは違う異空間を体験することができる。

箱根の山々に抱かれた極上のオアシス

　2002年11月に全面改装しオープンしたこの宿は、ある民放の温泉旅館ランキングで全国1位（！）になった。部屋付き露天風呂、２間以上の広い客室、温泉のお湯の質、眺望、おいしい料理・・・と“いい旅館”の要素を凝縮しているので、この結果もうなずける。