| 京都・大原地区は、日本の田舎の原風景そのものという人が多い。
その美しい山里の景観を残すため、建築物は2階建てまでという決まりがある。
だからこそ、少し高台に出てみれば、遥か遠くまで景色を見渡すことができるのだ。
ビル街の景色とは全くの正反対で、都会のストレスを忘れさせてくれるような景観が広がっている。
他にも、家々の屋根の色にも取り決めがあり、派手な原色は使用できないようだ。
現在、13軒の旅館や民宿が大原にはあるが、様々な規制により、新たな旅館も生まれにくい状況にあるらしい。
「大原山荘」が創業したのは昭和45年(1970年)のこと。当時は全10室ほどの小さな民宿で、温泉もなかった。
しかし、この年は「大阪万博」が開かれ、関西地方に一気に人が集まった年でもある。
さらに2年後、多くの日本人が「大原」のことを知る起爆剤のような出来事があった。
それが昭和47年に放送されたNHK大河ドラマ「新・平家物語」である。
このドラマのヒロインとも言える平清盛の次女・平徳子(後の建礼門院)が、「寂光院」にて出家する姿が描かれ、人々の感動をさそったのだ。
この影響で一気に大原は知名度を増し、人気観光地の仲間入りをした。
そして「大原山荘」でも例外ではなくお客が多くなってきたのだ。
その後、新館を増設し、平成7年には全19室の今のスタイルとなった。
現在宿のオーナーは2代目の山本秀幸さん。
父親である初代社長が宿を始める5年前、昭和40年に、ここ大原で生を受けた。
大学を卒業すると、宿の仕事はせずにウエディング衣装の営業マンとなった。
しかしこの頃から、「いつかは宿を継ぐのだから、お客さんと接する仕事をしたい」と考えていたという。
3年半のサラリーマン生活の間に、宿に生かせる話術の他に得たものがあった。
それが、現在の女将である奥さんの千絵子さんと出会ったことだ。
平成3年に結婚し、翌年には二人で、宿の仕事を手伝うことになった。
その数年後、大原の宿10数軒の経営陣が集まり、もっと観光客を呼び込むために温泉を掘ってみようと企画をする。
”京都”ブランドだけでは、将来が危ないと考えたわけだ。
しかし、このあたりの土地で温泉が出たという話はついぞ聞いたことがない経営者たちは、この無謀とも言える計画に賛同しなかったようだ。
結局この「大原温泉誕生計画」にチャレンジしたのは、山本社長(当時専務)含めて3人のみ。
「温泉が出なければ、大原にお客は呼べない」と危機感を感じていたのは、3軒の宿だけだったようだ。
そして、2003年5月から温泉の掘削(ボーリング)を始める。しかし掘れども掘れども熱い湯は顔を見せてはこなかった。
ボーリングは、あらかじめ科学的な根拠を基に場所を決めて、掘りはじめるのだという。
だがこの時は、1000メートル掘っても湯がでてこないという状況。さすがに「やはり大原には温泉が出ないんじゃないか」と、一同にあきらめムードも漂ってきた。
その後、掘削を始めてからちょうど一年後、源泉温度27.9℃ながら「大原温泉」がついに噴き出してきたのだ。
2ヶ月後には正式に温泉として認定され、宿に温泉を引きことができるようになった。
山本社長は、その後も様々なアイディアで、新しいチャレンジをしてきた。
2005年に「足湯カフェ」を併設し、観光客の憩いの場を造った。
2007年には新しい大浴場「山のお風呂」を新設し、旧大浴場を「貸切風呂」としてリニューアルした。
そんな企業努力を忘れない姿勢は、宿の用意してある様々なプランを見れば分かる。
いくつかここで紹介しておく。
まずは、「平日限定・片泊まりプラン」。
片泊まりとは、夕食なし朝食つきという意味で、2名様以上で、夕食なしの一泊朝食付きプランとなる。
チェックインは午後9時までなので、大原で観光し、夕食を食べた後、急に泊まりたくなったという時に便利。
お一人様7,300円(平日2名様一室利用時)という料金設定が非常に魅力的で、若いカップルに人気となっている。
若いグループ客に人気となっているのが「学割プラン」。
スタンダードな「みそ鍋プラン」限定のプランで、料金設定は以下のようなもの。
5名様 〜 9名様ならお一人様7,800円(送迎不可)。
10名様〜24名様でお一人様7,600円(送迎付き) 。
25名様〜39名様でお一人様7,400円(送迎付き) 。
40名様〜54名様でお一人様7,200円(送迎付き)。
55名様〜69名様でお一人様7,000円(送迎付き)。
70名様以上でお一人様6,800円(送迎付き)。
土曜日と祝前日は500円割増となる。
他にも、誕生日の当日もしくは翌日であれば「らく焼き」の無料体験ができる「バースデープラン」や、女性で4名様以上のグループでお酒がサービスされる「レディースプラン」など、ちょっとお得なプランが用意されている。
様々な発展・努力を続けてきた「大原山荘」は、「温泉」という切り札を持ったことによって、さらに将来が楽しみと言える。
一般的に、京都市街地近くに温泉があるとは、あまり知られていないようだ。
京都と言えば、日本屈指、いや世界でも有数の観光都市。
世界中から、この街に人々が訪れる。
ホテル、旅館は当たり前だが、この「大原山荘」のような、旅館に近いホスピタリティを持つ「温泉民宿」を利用することは、これから新しいトレンドになりそうな気がする。
事実、取材中にも、学生さんから、若いカップル、中高年のご夫婦、女性グループなど、様々な客層にめぐり会えた。
インターネットで情報を仕入れ、「料金も民宿だからリーズナブル。でも民宿っぽくない。」・・・と訪れる方も年々増えてきた。
賢い旅行計画を立てるなら、この宿をセレクトすることは正しい。
「大原山荘」は、「民宿」といっても大衆的なところがないのが、やはり京都にある所以なのかと、改めて京都ブランドを認識させられたのは確かだ。
この田舎の風景に身を委ね、悠久の時を感じるのも、現代人にとって必要不可欠だと思わずにはいられない。(J/IZ) |