千年の湯　古まん せんねんのゆ　こまん SennennoYu　KOMAN

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男女別の大浴場は、本館ロビーから少し階段をおりた半地下にある。 それぞれ、「樹齢の湯」「白亜の湯」と呼ばれ、時間により女湯と男湯が入れ替わる。 大浴場は、源泉かけ流しにしながら、循環ろ過させている。 循環させている理由としては、衛生面を考慮して僅かながら塩素消毒を施しているから。また常に適温に保つように温度調節も担っている。 しかし、加水はほとんどせずに、100％に近い源泉を注いでいるとの事。 利用時間は、15：00～24：00と、翌朝6：00～10：00。 この宿のシンボル的存在の「樹齢の湯」は、その名の通り、肥松（ひまつ）、槇(まき)、檜で造られ、木の温もりあふれる設え。 肥松とは、樹齢が200年～300年の松の中心部で非常に樹脂分の多いものを指す。 その肥松は、湯舟の底や洗い場で使われている。美しい飴色が印象的だ。 槇は壁材として、檜は湯舟の縁（ふち）や側面で使用されている。 まさに、総木造りのお風呂となっている。 また、湯口には、木の板を傾斜させ、そのくぼみに湯を注ぎ、湯舟に落としているのも、視覚的に面白い趣向だ。
男女別大浴場「樹齢の湯」
傾斜を利用した湯口
	こちら「樹齢の湯」には、フィンランド風健康サウナも備わっている。 ちなみに、もともとサウナは、フィンランドの「sauna＝蒸し風呂」が発祥である。 日本の伝統を感じさせる木造りの湯舟に、北欧のサウナの組み合わせは、現代人にとって最高のコラボかもしれない。
フィンランド風サウナあり
もう一ヶ所の男女別大浴場は、「白亜の湯」。 こちらは、打って変わって壁面は大理石が使われている。 浴槽にはタイルが貼られ、ちょっとしたレトロな雰囲気になっている。 広々とした湯舟で、名湯を体感してほしい。
男女別大浴場「白亜の湯」
城崎温泉は、その長い歴史だけでなく、療養効果も高い。 泉質は、「ナトリウム・カルシウム－塩化物泉」。 旧泉質名は、「含塩化土類－食塩泉」。 pH（ペーハー）6.92の中性の湯で、肌に馴染みやすい。 城崎の湯は、見た目は、濁り湯でもなく、特徴的な匂いもない、無色透明の温泉。 しかし、そのお湯には、見かけ以上に名湯と呼ばれるに相応しいスペックが隠されている。 温泉分析書を見れば、温泉1kg中の溶存物質は4,308mg／kgも含まれている。 「鉱泉分析法指針」によれば、1kgあたり1,000mgの物質が湯に含まれていれば「療養泉」と認められるのだが、その基準となる数値の4倍もの濃度があるのだ。 細かい成分を見てみると、ナトリウムとともに陽イオンを構成しているカルシウムイオンを、温泉1kg中457mg含む。 ストレスによるイライラを抑える鎮静作用があり、胃潰瘍やリウマチ、手術後の回復にいいとされる。 陰イオンの中で、91％を占めるのが、塩化物イオン（2210mg／kg）。 塩化物イオンとナトリウムイオンが結びつくと、いわゆる「熱の湯」と呼ばれる「食塩泉」となる。 つまり、肌に付着する塩分が発汗するのを抑え、湯浴み後に湯冷めするのを防いでくれる。 慢性的な皮膚病や、切り傷・やけどにも適応症が期待できる。 温暖化の影響からか、それほど雪深くなることはなくなったが、それでも雪が珍しくない城崎の冬。 カラダがよく温まる泉質の温泉があるからこそ、外湯巡りも全くつらくはないのだろう。 さらに、城崎の湯の質の良さを知るのに、こんなエピソードがある。 明治末期から昭和にかけて活躍し、“小説の神様”とまで言われた志賀直哉の裏話だ。 1913年（大正2年）、東京・山手線の電車にはねられ、重症を負った志賀直哉は、東京の病院で入院。 無事命は助かり、後養生のために温泉へ行くことにした。 この時はじめに訪れたのは、長野県にある某温泉地。 しかし、「余り傷に効かねえな」と思い、はるか遠く城崎まで移動したのだ。 そして、この地で療養する間、生と死を見つめなおし、「城の崎にて」という傑作を生み出したという。

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