元湯 環翠楼 - コラム~総括(1)-

箱根湯本から、東海道に沿っておよそ1km。
有名な土木遺産に登録されている函嶺洞門を越えたところに、箱根七湯(現在は箱根二十湯と呼ばれている)のひとつ、塔之沢(塔ノ沢)温泉がある。
塔之沢温泉は、阿弥陀寺を開山した弾誓上人(たんせいしょうにん)が、慶長10年(1605)に発見したと伝えられている。
この地に誕生した「元湯 環翠楼」は、400年の歴史を刻む、箱根屈指の老舗旅館。
開湯(創業)は、江戸時代初期の慶長19年(1614)の事。
目の前には、早川が流れている。
早川沿いに佇む「元湯 環翠楼」
早川沿いに佇む「元湯 環翠楼」
当時の屋号は「元湯」だった。
「元湯」が創業してから16年後に、向かいの「一の湯」が生まれたわけだが、その屋号には、塔之沢温泉の開祖という意味が含まれている。
よくある「元祖」と「本家」と同様、「一の湯」が後発にも関わらず、正当性を主張しているような屋号にも聞こえるのは、昔から対抗意識というかライバル関係にあったからであろう。
浮世絵師・歌川広重(1797~1858年)作「箱根七湯 塔之澤」では、仲よく「元湯」と「一の湯」が描かれている。
歌川広重作「箱根七湯 塔之澤」~橋渡ってすぐ左手にあるのが「元湯」
歌川広重作「箱根七湯 塔之澤」~橋渡ってすぐ左手にあるのが「元湯」
元和4年(1618)に箱根宿(はこねじゅく)が設立。
翌年に、箱根関所が置かれた。
箱根宿は、箱根山にかかる箱根峠と箱根関所の間の狭い地域に設置された。
東海道五十三次の中で最も高い場所だった。
この頃は、滞在の湯治客のみとなっており、現在の1泊2食などの一夜湯治客は禁止とされていた。
宿泊が公認されるようになったのは、文化2年(1805年)まで待たねばならなかった。

寛永19年(1644)には、皇室や将軍への献上湯が始まった。
ちなみに、水戸光圀(1628~1701年)も、明の儒学者・朱舜水(1600~1682年)とともに、登楼されたという。
その時、朱舜水(しゅしゅんすい)が、明国一の温泉とうたわれていた「驪山(りざん)」よりもすぐれていると称賛し「勝驪山(しょうりさん)」の名をこの塔之沢に付けたというエピソードが生まれた。
朱舜水は、明朝の復興活動に破れ、寛文5年(1665)6月に、日本に亡命していた。
そして、光圀が彼を、江戸、または水戸に招き入れ、その後、光圀の学問の師となったのだ。
光圀と朱舜水が「元湯」を訪れた年は定かではないが、幕末明治期の志士で、明治の三詩人の一人、小野湖山の書に記録が残っている。
第2代水戸藩藩主・徳川光圀 明の儒学者・朱舜水
第2代水戸藩藩主・徳川光圀 明の儒学者・朱舜水
「元湯」の初代経営者は、弾誓上人とともに温泉を発見したとされる秋山道伯(豊臣家の家臣であったとされる説がある)。
その後、江戸時代は、彼の子孫が経営していった。
ちなみに、「一の湯」の創業者は、豊臣秀吉に滅ぼされた北条家の家臣だったらしい。

その後、「元湯」は、明治の初め、小田原在住の中田暢平に経営権が移った。
屋号も「元湯 中田暢平旅館」となる。
彼は、小田原の国学者・吉岡信之や福住正兄などに学んで和歌をよく詠んでいたという。
明治初期の「環翠楼」(元湯 中田暢平旅館)
※橋を渡って左手が「元湯(環翠楼)」右手が「一の湯」
明治初期の「環翠楼」(元湯 中田暢平旅館) ※橋を渡って左手が「元湯(環翠楼)」右手が「一の湯」

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元湯 環翠楼 宿泊レポート


コラム
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この宿のキーワード
江戸初期創業の塔ノ沢随一の老舗旅館
幕末、明治、大正時代の偉人たちの定宿
大正ロマン溢れる有形文化財の宿
古より伝わる美肌の湯、源泉かけ流し
旬の素材を吟味した懐石料理は客室で
こんな人はOK
技巧を凝らした日本建築に興味のある方
歴史に思いめぐらす事が出来る方
こんな人はNG
お客様は我儘し放題の神様だと思っている方
館内の備品類が貴重なものと認識していない方

元湯 環翠楼 基本情報

宿泊情報

IN 15:00
OUT 10:00
カード使用 可(VISA・マスターのみ)
部屋の眺望 川・山
部屋食 夕・朝 ※12名以上は宴会場
夕食の内容 懐石風料理
朝食の内容 日本食

宿泊料金 ※料金は1室2名様宿泊時の1名様分 (税込)

公式HPネット予約特典 【ベストレート(最低価格)保証】 公式HPからの予約が一番お得な料金になっております。
お得なプラン 環翠楼建立100年記念プラン、平日限定プラン、お一人様プラン、日帰りプランなど、お得なプランの詳細は公式をチェック★
温泉内風呂付き客室 ¥27,000~ (客室名「清流」で1泊2食2名利用の場合の1名分料金)
※部屋の広さは本間9畳+次の間、広縁、洗面所、トイレ、掛け流し内風呂付き
通常客室 ¥17,000~ (1泊2食2名利用の場合の1名分料金)
※部屋の広さは本間8畳+次の間、広縁、洗面所、トイレ付き

施設情報

創業/改築 創業:1884年(明治17年)/改築:1996年(平成8年)
部屋数 全25室
収容人数 122名
貸切風呂 料金 :宿泊の場合 無料
利用時間 :内湯:24時間、露天:22:00~4:00 ※休前日の貸切可(内湯)
予約方法 :予約なし(先着順)
大浴場・他 男女別露天風呂あり(※男女別の入れ替え無し) 男女別 「大」風呂あり(※男女別の入れ替え無し) 岩盤浴(16:00~24:00)
駐車場 30台
ペット 不可
バリアフリー 非対応
エステ・マッサージ 英国製オーガニックトリートメントオイルを利用したアロマテラピー
※完全予約制
フルボディコース¥16,500/60分
セミボディコース¥13,200/40分
インターネット 全客室と応接間(2F)にてWi-Fi利用可
DVD なし
TVチャンネル 地上波
施設 宴会場・売店・バー・卓球コーナー(有料)
冷蔵庫のシステム 利用した分だけ申告(持ち込みのドリンクを入れるスペースあり/冷凍室不可)
冷蔵庫のドリンク:中瓶ビール
自動販売機 ジュース、アイスクリーム
売店 あり アイスクリーム
浴衣 バスタオル
タオル 石鹸
ボディソープ シャンプー
コンディショナー リンスinシャンプー
シャワーキャップ 歯ブラシ
ドライヤー ブラシ
くし カミソリ
綿棒 洗浄機付きトイレ

その他サービス・レンタル情報

レンタルサービス 加湿器・釣り(無料)15:00~17:00
車いす
お子様 お子様用の浴衣(90cm~)・専用料理「板長おまかせ日替わりメニュー」
外国語

おまけ情報

オススメお土産 寄せ木細工の箸
近くのコンビニ クルマで3分
携帯アンテナ ◎docomo ◎au ◎softbank

貸切利用

料金
利用時間
※食事付きプラン(要予約)
料金 ¥13,000~
食事の内容 懐石風料理
設定日 毎日
受付時間 15:00 ~ 20:00
その他 全ての温泉施設(大正風呂・貸し切り風呂・露天風呂)を利用可

男女別利用

料金
利用時間
その他

元湯 環翠楼 温泉情報

泉質 アルカリ性単純温泉(低張性・アルカリ性・高温泉)
源泉の温度 30℃、45℃、58℃の3本の源泉を混合して使用
湧出量 60リットル/分
水素イオン pH 8.9
溶存物質総量(ガスを除く) 527mg/kg
源泉の湧出状況 自家源泉で動力泉(ボーリングによってくみ上げる源泉) ※自家源泉の本数:3本
加水/循環ろ過 男女別大浴場、露天風呂、貸切風呂、客室露天風呂は、源泉100%かけ流し 部屋付きの温泉風呂は蛇口をひねると源泉が出てくる
加温 あり(季節によって加温)
消毒 あり(露天風呂のみ)
浴槽の湯の入替 1日1回
入浴剤 不使用
泉質別適応症(平成26年7月1日改定) 自律神経不安定症、不眠症、うつ状態
浴用の一般的適応症(平成26年7月1日改定) 筋肉若しくは関節の慢性的な痛みまたはこわばり
( 関節リウマチ、変形性関節症、腰痛症、 神経痛、五十肩、打撲、捻挫などの慢性期 )、
運動麻痺における筋肉のこわばり、冷え性、 末梢循環障害、胃腸機能の低下
( 胃がもたれる、腸にガスがたまるなど )、 軽症高血圧、 耐糖能異常 ( 糖尿病 )、
軽い高コレステロール血症、軽い喘息又は肺気腫、痔の痛み、自律神経不安定症、
ストレスによる諸症状 ( 睡眠障害、 うつ状態など )、病後回復期、疲労回復、健康増進
湯の色 無色透明
飲用 不可
飲用の適応症
におい/味 無味無臭

元湯 環翠楼 交通アクセス&周辺情報

交通アクセス

電車 JR小田原駅→小田急線にて箱根湯本駅下車、バス3分徒歩15分 または、箱根登山鉄道・塔ノ沢駅下車、徒歩5分
送迎 あり箱根湯本駅より送迎バスにて約5分(有料:一人100円/税込)
クルマ 【東京方面から】
東名・小田原厚木道路経由、小田原西ICをおりて約5分(4km)。
インターをおり、国道1号線で箱根湯本駅前を通り、函嶺洞門を抜け二つ目の橋を渡ると左側。駐車場は玄関前より20mほど先の道路両側。
【名古屋方面から】
東名、御殿場ICをおり、国道138号線にて箱根方面へ。
宮ノ下より国道より国道1号線にて大平台経由で約50分。箱根登山鉄道のガードを潜るとすぐ。塔ノ沢温泉場に入ると、道路両側に駐車場あり。玄関は20m先。

周辺情報

周辺観光スポット 阿弥陀寺・箱根ベゴニア園・箱根ガラスの森・彫刻の森美術館・ポーラ美術館・成川美術館
レクリエーション(観光農園、公園など)
スポーツ
スタッフより 五代目 梅村哲さんからのコメント
源泉かけ流しの温泉と館内にあふれる歴史を堪能してみてください。
取材日 2013/06/17
一部情報更新日 2023/10/04

※予約問合せの際は、必ず「貸切温泉どっとこむ」を見たと言ってください。

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この宿の記事制作者

温泉コム株式会社 代表取締役

30年以上前から、全国の温泉宿をまわり続け、「貸切風呂」の必要性を宿主に説いていた。 今でも、一年の半分を温泉宿で過ごす旅人でもある。 コラムニスト、カメラマン、ドローンパイロットの他に、ホームページのデザイン、コンサルタント業務もこなす。

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