千明仁泉亭 宿泊レポート

男女別の露天風呂は、大浴場とは別にある。
宿の一番奥まった場所、別館「鶴の居」の隣りに位置している。
ほぼ共通の造りで、時間による男女の入れ替えはなし。
利用時間は、15：00～22：30と翌朝6：00～9：00。

開放的な露天風呂から立ち上がれば、小野子山をはじめ、上州の山々を見渡せる。
爽やかな風にあたりながら、ぬるめの湯に浸かっていると、つい長湯をしてしまいそうだ。
小さいながらも、内風呂とサウナを併設している。

御婦人露天風呂と同じく、殿方露天風呂も、露天風呂に内風呂とサウナが付いている。
濁り湯に身をまかせながら、贅沢な湯浴みの時を過ごしていただきたい。

「黄金の湯」の泉質は、「カルシウム・ナトリウム－硫酸塩・炭酸水素塩・塩化物温泉」。
pHは、6.3の中性。
見た目は刺激が強そうな湯だが、実際は肌に優しい感触が味わえる。

温泉の溶存物質で注目したいのは、やはり一番多く含まれているカルシウムイオンと硫酸塩イオン。
これは、旧泉質名でいうと「石膏泉」（カルシウム－硫酸塩泉）に分類されるもの。
硫酸イオンは、いわゆる “傷口をふさぐ” 作用があり、それと同時に皮膚の弾力性を刺激し、“シワを防ぐ”効果もある。
カルシウムイオンは、角質層の形成を促進させる効果があり、「美肌の湯」としても知られている。
ちなみに、カルシウムによるリラックス作用もあるとされている。

陰イオンの中で次に多く含まれているのは、炭酸水素イオン。
これは、カラダ中の血行を良くする効果がある。
これが、ナトリウムイオンと結びつくと、「重曹泉」となる。
「重曹泉」は、皮脂や古い角質を石けんのように洗い流してくれる作用があり、入浴後さっぱりした印象を受ける場合がある。
油性の肌でお悩みの方には、特にお勧めな泉質だ。

もうひとつの主成分の塩素イオンは、カラダの芯まで温めてくれる保温効果があるとされる。
いわゆる「食塩泉」（ナトリウム－塩化物泉）の作用で、塩分が汗腺を防ぎ、熱の放出を防ぐというわけだ。
保湿効果もあるので、女性に嬉しい泉質だ。

このように、適応症の豊富さが物語るように、極めて極上の温泉である事がわかる。
さらに、天然の保湿成分と言われるメタケイ酸も豊富に含まれ、湯冷めしにくく、肌もしっとり。
比類の無い「美人の湯」と言えるだろう。

「それでいて、皮膚病、切り傷、やけどなどに効果があるというから、このお湯のファンは多い。
実は、この宿の常連客には、アトピー性皮膚炎で悩んでいる方が多く、それだけ効き目があるということなのだろう。
肌をスベスベにしながら、殺菌作用もあり、保湿効果があるのだから、当然といえば当然か。
年配の方の保養向けとしてもお勧めできる。

鉄分の含有量も見逃せない。
泉質名を決めるルールで言えば、若干溶存物質が足りないので「含鉄泉」とは命名できないが、湯の濁り方を見れば相当な効能がありそうだと分かる。
本来、「婦人の湯」と呼ばれ、貧血、更年期障害、月経障害にいいとされる。

また、飲泉の適応症としては、糖尿病、痛風、肥満症、胆石症、慢性胆嚢炎、慢性便秘などがある。
ただし、残念ながら、今のところ保健所の飲用の許可を取っていないという。