「ホテル ニューさがみや」の前身は、江戸時代中期より「伊豆山の千人風呂」として名を馳せていたという「相模屋旅館」。
その宿を、オフィス向けシステム機器販売などを行っている、株式会社大塚商会が買取し、1985年(昭和60年)に「ホテルニューさがみや」としてリニューアルオープンした。
大塚商会は、現在CMでもおなじみの、文房具などの配達を行う「たのめーる」などの事業も行っているが、実は旅館ホテル経営にも力を入れている。
千葉九十九里の「ホテル一宮シーサイドオーツカ」、滋賀琵琶湖畔の「ホテル琵琶レイクオーツカ」、三重県石鏡の「ホテルいじか荘」、そして熱海伊豆山の「ホテルニューさがみや」と、4つの人気宿を運営しているのだ。
実は、これらの宿には共通した特徴がある。それは、宿の近くに海か湖があり、抜群のロケーションを誇るリゾートホテルだということ。
その中でも「ホテルニューさがみや」は、大塚商会が最初に手がけた宿。
そして、最も豊富な温泉があり、宿のスペックは非常に高い。
この4宿は、母体の大手商社の保養所としても一部使われてはいるが、実は最も一般のお客の割合が高いのが、この「ニューさがみや」なのだ。
創業して翌年の1986年(昭和61年)、特別室の711号室で第35期王将戦第5局が行われた。
これをきっかけに、広く知られるようになり、徐々に人気宿となっていく。
1987年(昭和62年)には、JTBの全国表彰という名誉も授かった。
これは、お客が答えるアンケートに基づいて、満足度が90点を超えたのだ。これは、全国でも20軒の宿しか達していなかった数字である。
また、この年には8階最上階に、男女別露天風呂「走り湯」を完成させた。
1991年(平成3年)には、同じく8階に貸切露天風呂も完成。
1993年(平成5年)には、離れの貸切風呂「滝の湯」も誕生した。
平成2年頃のバブル経済崩壊のあとも、このようにいち早く個人旅行者向けの設備投資をする事により、逆に客室稼働率を伸ばしていった。
2002年(平成14年)には、星野寛治さんが支配人に就任。
星野支配人のプロフィールを紹介すると、まさにホテル人生そのままの人である。
18歳の時、熱海の「ニューフジヤホテル」(現在は伊藤園ホテルグループ)に就職し、予約係から営業まで幅広い業務をこなした。
その後、28歳でフロントマネージャーに就任するという出世を見せたが、1985年に「相模屋旅館」が「ホテルニューさがみや」として新規オープンするという話を聞くと、「真っ白な状態の宿で自分の力を試してみたい」と思い、転職に踏み切ったという。
2002年以降、星野支配人が陣頭指揮をとるようになってから、この宿はさらに順調に業績を伸ばしていく。
支配人が行った改革は、スタッフのモチベーションを上げたことだった。
最初に、社員全員と個別面談し、色々な意見や要望を汲み取った。
そして、不満の大きかった女子寮の改装工事を行う。
さらには、社員食堂を充実させ、お客に出しているものと同様の美味しいお米を使うようにした。
新年会や、社員旅行を毎年実施し、スタッフ間の信頼関係や連帯感といった、目に見えない部分にも力を入れた。
星野支配人も、元々は多少の不満を持つスタッフの一人だったわけで、従業員の気持ちが充分に理解できるのだろう。
ちなみに、星野支配人のストレス解消法のひとつがカラオケで、十八番は堀内孝雄の「影法師」とのこと。
また支配人が行った改革の一つに、新しい宿泊プランの作成がある。
「悠々シニアコース」という少食プランもその内の一つ。
一般的に宿の夕食というと、ご高齢の方や女性にとっては、豪華過ぎてボリュームがありすぎるということが多い。
しかし、この少食プランなら腹八分目で押さえられ、その後の湯浴みなどに影響はなく、オススメだ。
その他、宿泊プランに関しては、常に魅力的なものがあるので、宿の公式HPを是非チェックしていただきたい。
首都圏にお住いの方だったら、是非クルマでの来館をお奨めする。
厚木ICから小田急厚木道路に乗り、西湘バイパス〜国道135号線〜真鶴ブルーライン〜熱海ビーチラインへと続く道は、海岸線を沿うように走っている。
相模湾に煌く、眩いばかりの日の光を見れば、いやが上にも旅への高揚感が生まれてくる。
昼過ぎに伊豆山に到着したら、古刹「伊豆山神社」を始め、「逢初地蔵堂」や「般若院」など、歴史的な建造物を巡りたい。
「伊豆山神社」には、源頼朝と北条政子が、二人座って愛を誓い合ったといわれる「腰掛け石」、二人が始めて出会ったという「逢初橋」など、ロマンチックな史跡も多いので、ご夫婦から若いカップルにもオススメの散策コースだ。
宿に戻り、チェックインを済ませれば、後は温泉三昧。
1階の大浴場、8階の露天風呂と貸切露天風呂、3階の離れの貸切風呂「滝の湯」と4種類のお風呂を体感できるのだ。
素材にこだわった、近海の海の幸中心の懐石料理も、満足感が高い。
そして、翌朝早起きして見る海の日の出は、何物にも代えがたい美しさだ。
この宿の人気度は、データに顕著に表れている。
年間の客室稼働率は、全47室という規模でありながら、75〜80%という高い数字を示している。
また、驚くべき事にリピーターになる確率が、50%を超えている!
星野支配人に伺ったが、年に19回泊まった人や、創業以来25年間のうちに200回宿泊している人もいらっしゃるという。
圧倒的なリピート率を誇る「ホテルニューさがみや」は、今風のデザイナーズ旅館でもないし、老舗の雰囲気のする門構えもない。
しかしながら、全ての面で、“超”がつく高級ではないが、高品位を感じさせる宿なのだ。
一度でも訪れると、どんな年齢のお客でもトリコにしてしまうことだろう。
あの海に浮かぶ朝日を見てしまったら、またもう一度見たい、また来たいとなるのも分かるような気がする。
この宿の一番の魅力は、いわゆる「安心感」。
感心するのは、豊富な源泉量に裏づけされた温泉旅館の雰囲気と、充実した施設とスタッフの接客によるリゾートホテルの快適さを同居させているため、幅広い年齢層のゲストに不満を抱かせないところ。
これが旅をする時に一番大切な安心感を生み、チェックインして時間を経過するごとに、この宿の魅力を理解するようになるのだ。
巷では、温泉旅館ホテルの値下げ競争など、この業界でもデフレの波が押し寄せている。
実際、夕食をバイキングにしたり、スタッフを減らしたりして、低料金で運営している旅館ホテルが、ここ熱海エリアでも増えてきた。
しかし、なぜ「ホテル ニューさがみや」の客室稼働率が下がらないのか・・・を考えると、そこはつまり「お客様を大事にする」という、当たり前の基本理念を徹底しているから。
全国に数万の宿泊施設があるなかで、「ニューさがみや」を選んでいただいたという感謝の思いが、すべてのサービスに表れているからに他ならない。(J)