伊勢志摩国立公園は伊勢市から志摩市に渡り、典型的なリアス式の海岸線と大小多数の島々が独特の造形美を成している。
内陸部には暖帯性の広葉樹が茂り、伊勢神宮など悠久の歴史を有する建築物も旅人の心を捉えている。
そんな伊勢志摩の中心にある鳥羽市は海の幸・真珠・水族館など、潮風のロマン漂う美しい街。
雄大な自然と、海女小屋や養殖筏などの人が作り上げた文化が織り成すコントラストは、心に刻み込まれる光景だ。
海女といえば鳥羽市石鏡(いじか)町は海女発祥の地として知られている。隣町の国崎町同様、古くから海女漁が営まれてきた。
現在でも現役の海女が活躍し、岸に建てられた小屋で海女が漁で疲れた体を癒したり、破れた網などの修理を行っている様子が見られる。
男性の漁師も多く、石鏡290世帯のうち約3分の1が漁業に関係している。(2005年鳥羽市統計)
石鏡漁港の周辺では、四季を通じて、メバル、クロダイ、グレなどが釣れ、「石鏡ブランド」として一目置かれている。
石鏡の名の由来は、石鏡の沖合い1キロにある「石鏡島」。
この小島は以前、島の中央に丸い空洞があった。
石鏡の里と、太陽が昇る場所の線上にあり、その空洞から朝日を拝むことができ、村人に崇拝されていたという。
空洞が鏡のように自然を映し出したことから、石の鏡・・・「石鏡」となったといわれている。
沖合い10キロほどのところには「神島」という周囲4キロほどの小さな島がある。
漁師の少年と少女の青春と恋愛を描いた三島由紀夫の名作「潮騒」の舞台は「歌島」だが、実は「神島」の古名なのである。
三島はこの作品を書くのに二度、この神島を訪れた。島人が助け合う共同体の素朴な暮らし、都会育ちの三島にはとても新鮮にみえたのだろう。恩師である文豪・川端康成にこんな手紙を書いた。
「目下、神島という一孤島に来ております。映画館もパチンコ屋も呑み屋も、喫茶店も、すべて『よごれた』ものはなにもありません。この僕まで浄化されてー。ここには本当の人間の生活がありそうです」(『三島由紀夫書簡集』)
ちなみに島までは、鳥羽駅徒歩5分の佐田浜港から、市営定期船で40分ほどのアクセス。機会があれば一度は訪れてみたい場所だ。
小説の舞台と同じように、潮騒が聴こえてくる石鏡町の岬に「ホテルいじか荘」は建つ。
崖の上に立ち、象徴的な灯台が併設されている。
こちらの「石鏡灯台」は小さいながら実際に使用されていて、17海里先まで認識できるという灯光が点滅する。
石鏡周辺には海上交通にとって多くの難所があり、船舶が場所を識別するための目印になっているのだ。
フロントロビーは清潔感あふれ、広々としたスペースでコーヒーコーナーとして利用されている。
併設されているのは展望デッキ。
客船のデッキにいるような開放感抜群のオープンテラスだ。
太平洋に抱かれたその眺望は、晴れた日には遥か遠く、富士山も眺めることができる。
また宿の下に海女小屋があり漁場となっている。凪の日には海女が潜るところを見られるかもしれない。
ちなみにフロントで双眼鏡を借りれば、より一層景色を楽しめるだろう。
「いじか荘」ではフロントのある階を3階とし、客室は1階、2階、4階にある。
2階にはカラオケルームや貸切風呂などを備える。
カラオケルームは「クリスタル」と「エメラルド」の2部屋。19時〜23時の間利用できる。
それぞれ料金は1時間2,000円、1時間3,000円。
同じく2階に備えた男女別の大浴場。共通の造りで利用時間は15:00〜24:00、6:00〜10:00。
露天風呂はなく広々とした内湯のみだが、眺望の素晴らしさは特筆に値する。一面のガラス窓から見下ろす大パノラマはまるで一枚絵のようで、何とも贅沢な気分である。
こちらの自家源泉「石鏡温泉」は毎分270リットル湧出されるという豊富な湯量を誇る。
その泉質は「ナトリウム・カルシウム-塩化物冷鉱泉」。冷鉱泉のため加温や消毒はしており、かけ流しと循環を併用している。
一般的に食塩系の塩化物泉は、体が温まりやすく湯冷めしにくいという特徴を持つが、こちらの温泉は長湯をしてものぼせることは少ない。ゆっくりと景観を楽しみながら湯浴みしていただきたい。
効能は慢性消化器病・慢性皮膚病・やけど・きりきずなど。
洗い場の他にサウナも装備されている。その利用時間は16:30〜22:00.。
脱衣所には無料で利用できるマッサージチェア。
女湯だけに備わるベビーベッドもうれしい設備だ。